ROVO / VITAMIN! c/w CISCO!（日ROAR RECORDING EIZJ-0007 12インチシングル）
ROVOの前身は９５年６月、法政大学で行われた第１回まぼろしの世界主宰ライヴで唯一のライヴを行った「太陽の塔」である。この時は後にROVOの主要レパートリーとなる２曲を演奏したが、岡野太の１ドラム、広瀬淳二の参加といった要素のため、よりストレートなスペースロックサウンドという印象だった。その後バンドはROVOと改名し、ツインドラムによるリズム強化とＤＪとの共演といったファクターを得て、今や東京ライヴシーンの対ドラムン・ベース最終兵器と呼ばれるほどの存在となっている。その彼らが満を持してリリースした、１２インチシングルによるデビュー作である。
ROVOの音の面白さを"CISCO!"という曲を例にとって見てみよう。まずはゆったりとした８ビートの刻みから曲はスタートする。そこに全く違ったテンポのもう１つのリズムが加わって曲を攪乱していく。シンプルな８ビートを刻むベースは、テンポを少しずつアップさせながら２つのリズムの間をしなやかに往来していく。やがて２つのリズムはテンポを上げながら収束し、大きなうねりとなってクライマックスを迎えていく。その間、勝井・山本・益子の３人による上物は自由で空間的なサウンドでリズムを盛り立てていく。ここでの主役はあくまでリズム。まるでＤＪの２枚掛けをバンドで再現しているようである。
このような実験的なリズムアプローチは以前から勝井のユニットであるKICKSでも追求されていたが、明快なテーマ部やソロによって曲が構成されているKICKS に比べ、ROVOではそうした曲の構成要素を大胆に取っ払い、それがバンドによるテクノ／トランスサウンドとでもいうべきユニークな効果を生み出しているのは特筆される。余談だが、この曲は"ROVO"というタイトルでKICKSのライヴで演奏された事もある。この時は"SUPER NOVA"とのメドレーという実に贅沢な構成だった。
この１２インチに収録されているもう１つ曲"VITAMIN!"も、アンビエントな電子音・ツインドラムによるリズムパート・ジャンベ太鼓によるエスニックなパートの３つが、カットインで切り替わったりミックスされたりして場面転換していくというもの。これもＤＪ的な手法と言っていいだろう。とにかく今最も刺激的で、創造力にあふれたバンド。クラブやＤＪ対応といった見方を抜きにしても、多くのリスナーにその面白さを体験して欲しいバンドだ。