EVAN PARKER SOLO2000/9/28 麻布十番DELUXE
エヴァン・パーカー(sax)の来日公演初日です。今回パーカーは、エレクトリック・アコースティック・カルテットとソロの２タイプの演奏を行います。会場のDELUXEは六本木駅から歩くとかなり時間がかかりますが、南北線の麻布十番駅が出来たので大変便利になりました。ただし、フライヤーに掲載されている地図が未開通の大江戸線の駅からの道順になっているため、場所を探すのにやや手間取りました。会場の外観も、目立つ看板があるわけでもなく、まるでアパレル会社の倉庫兼店舗のような作りで、つい通り過ぎて周りをうろうろしてしまいました(^_^;)。
中に入ってみると、多少内装はあるものの、ほとんど倉庫のよう。道路側に面したところに仕切りを立ててステージがわりにしています。マイクが前に１本、後方左右に各１本ずつセットされていましたが、これは録音用でしょうか。観客は長い箱型の席に座って鑑賞。ソファ席もありましたが、目線が低くなるためこちらはパス。最前列をソファにしてくれれば、後ろの方はもっと見やすかったんですけどね。天井が高いので、音響はなかなか良いです。客席は演奏中は物音を立てずにじっと聴き入っているため、オーディエンスノイズは皆無。ただし、ガラス戸をへだてたすぐ外で車が通る音が聞こえてしまいます。照明に格子がかかっていたため、演奏者に影が入ってやや見にくかったのもちょっと残念でした。
演奏は定刻の20時をやや過ぎてスタート。パーカーはソプラノサックス１本と水のボトルをもって登場。ステージ中央に立ち、ほぼ直立不動で演奏します。１時間ちょっとで１０分超のセットをアンコールも含め５本、ほぼ全て同じようなアプローチでの演奏で各セットごとの変化はあまり感じませんでしたが、全く飽きることなく聴けました。むしろ、もっと長くてもいいくらい。
その演奏スタイルは、長時間のノンブレスと超高速の指の動きで、各セット１０分近く音が途切れないという恐ろしいもの。あまりの音数の多さと速さで、前に出した音が聞き手の耳に残っているうちに次の音が来るため、複数のアンサンブルに聞こえてしまうほどです。それも徐々にスピードアップしていくというのではなく、いきなりトップスピードに入ってそのまま落とすことなく延々吹き続けるのは凄い。全くのノーエフェクトでこれほどの音の渦のような空間を作り上げてしまう人は他にはいないでしょう。姜泰煥が演奏の中で時間軸を自在に変えながら演奏するなら、パーカーは周囲よりもはるかに圧縮された時間の中で演奏しているように感じます。
また、倍音奏法での高音の美しさも素晴らしい。サックスの音の概念を一発で吹き飛ばしてしまうようなものでした。フレージングについては、もっと抽象性の高いものを想像していたのですが、特定フレーズの繰り返しおよびそれを少しずつ変化させていって演奏を展開させていく場面が多かったのが意外でした。これならミニマル・テクノなどの好きな人にも大いにアピールするのではないでしょうか。
アンコールセットでは途中、何度か音を切る場面（終わったと思って拍手をしそうになる人、私も含めて数人(^_^;)。さらに、高音で持続音を演奏するなどそれまでとは少し違ったアプローチも聴かれました。２度目のアンコールはサックスは持たずにステージに現れ、一礼して拍手に応えてライヴは終了しました。
私はカルテットの演奏も行く予定ですが、こちらの方も楽しみです。