ナスノミツルSESSION、吉田達也＋今堀恒雄
2006/11/27 初台 THE DOORS
ナスノミツル弾きっぱなし企画第２弾（第１弾のバンド編と変わって、今回はセッション編）に、doubt musicからリリースされた吉田達也＋今堀恒雄のデュオアルバム"Territory"レコ発ライヴを相乗りさせた形のライヴです。
・ナスノミツルb＋KILLER MANTIS（高田宗紀tt、藤掛正隆ds）
最初のセットは上記メンバーによるセット。藤掛はラディックの１タム１フロアのセットを使い、比較的シンプルなフレーズのパワードラムを聴かせます。高田は横幅の広いテーブル上にアナログターンテーブル、CDJ、ミキサーなどをセット。アナログではスクラッチ音を、CDJでは電子ノイズ音や打ち込みリズムトラックなどを出します。この２人に対抗してナスノは手元に置いたディレイを使ったショートループ音や、各種ファズを使った硬めの音色を中心に演奏。予想以上にバランスの良い音でした。４０分ほどのセット。
・ナスノミツルb＋中村弘二g&CDJ＋外山明ds
元スーパーカーの中村弘二は白＆黒のテレキャスと、テーブル上に置いたCDJを使用。明快なフレーズはほとんど無く、深いリバーブをかけた単音でのつまびきや、ファズトーンでの掻きむしるようなノイジーなプレイが目立ちます。CDJでは鐘の音やレコードの針音のようなノイズなど具象的な音を出します。外山は藤掛と同じセットを使用。疾走と攪乱＆はぐらかしを交えたおなじみのスタイル。ナスノは前セットで多用したディレイとファズは抑え気味で、ナチュラルな音でのプレイ中心。４０分ほどで終了しましたが、ナスノはもう少し長くやりたげでした。しかし先日見たFOSSA MAGNAといい、メジャー系の若手（でもないか）のミュージシャンがこのシーンに接近すると、演奏の良し悪しはともかくなぜこんなに地味になってしまうんでしょうか。不思議です。
・吉田達也＋今堀恒雄
この日はインプロではなく、アルバム"Territory"に収録された曲を再現するというもの。そのため事前にリハも行い、セッティングもそれ向けになっています。吉田はハイタムにオクタパッドを設置し、セット右手側にはキーボード（ピアノ音色）と小型サンプラーをセット。今堀もテーブル上のサンプラーを操作しながらの演奏。
１．Outflow Of Brain Waves（脳波流出）
２．ETS（受動喫煙）
３．Compound Fracture（複雑骨折）
４．Nuclear Family（核家族）
５．Language Pollution（言語公害）
６．Lymph Gland（リンパ腺）
タイトルは全てdoubt musicの沼田氏が付けたそうで、吉田「意味は俺たちに聞かないでください（笑）」１は今堀のクセのある刻みリフに、グルーヴィなリズムが乗る形。サンプリングで挿入される吉田のコーラスパートが妙にポップで面白い。吉田ソロの"Horizon"を思い出させる感じ。２は高速変拍子ユニゾンキメが連発されるテーマが吉田らしい曲。３は吉田のドラムに過剰なまでのリバーブやパンニング処理がされる曲。こういうPAでの音処理は珍しい。４では吉田はドラムパートをサンプラーで鳴らし、その間フリーなピアノを弾いたりします。５は今堀の操作するサンプラー音に導かれる曲。ラストの６は吉田曰く「最大の難曲」。始まっていきなり失敗したと思ったら、「ベースのフレーズを出していたサンプラーがリバースになっていた（笑）」とのことで再開。屈折した上に隙間の多いベースラインに、クリックを聞かずに普通のバンドアンサンブルのように合わせてしまうという確かに難易度が高い曲。知らずに聞いたら３ピースバンドのインプロロックセッションに聞こえてしまいそう。ここまで約３０分。
吉田＋今堀デュオの曲はいずれも高水準で、特に昔のティポグラフィカに顕著で最近のunbeltipo Trioでは影をひそめていた今堀の変態的なフレーズやサウンドが随所に盛り込まれており、非常に新鮮味を感じました。かつてのルインズぽいフレーズも出てくる場面も面白い。インプロに拘る内橋とのコンビとは対照的なこのデュオは、今後も継続して活動してほしいものです。
続いてナスノを加えたトリオでインプロセッション。吉田はオクタパッドを多用し、リズムマシンの軽い音色やタブラ音のフレーズループなども使用し、突っ走る場面とアクセントを付けるのが面白いです。unbeltipo Trioや是巨人とも一味違ったアンサンブルで、予想以上の面白さ。この編成で"Territory"収録曲やunbeltipo Trioの曲なんかを聞いてみたいと思いました。約１５分の演奏。
アンコールセットは全員でのセッション。とは言っても、ドラムセットは２台しかないので前半は藤掛、後半は外山と入れ替わっての演奏。吉田と藤掛、外山のツインドラムはさすがの迫力です。外山は入れ替わったところで藤掛がやっていたパワードラムのフレーズをそのままコピーして演奏し、２階関係者席の笑いを誘っていました(^_^;)。約２０分の演奏で終了。結局終演時間は２２時４０分過ぎでした。凄いボリュームでしたが、ナスノ曰く「unbeltipo Duoもやろうという話もあったけど却下しました」とか。もしやっていたら何時に終わっていたんでしょうか(^_^;)。