元フランク・ザッパ・バンドのギタリストで、その後はソロや自分のバンドBEER FOR DOLPHINSで活動しているマイク・ケネリーの単独来日公演です。来日は７年ぶり。今回はソロに加えてホッピー神山(kb)、鬼怒無月(g)、ナスノミツル(b)、菅沼道昭(ds)といった日本勢とのセッションが用意されており、期待大です。
まずはケネリーのソロセットから。
１．Scotch (Boil That Dust Speck)
２．Skull Bubbles (Dancing)
３．Hello (Wodden Smoke)
４．Father's Day (Wodden Smoke)
５．Why Am I Your Guy? (Sluggo!)
６．Thanksgiving (Wooden Smoke)
７．Joe (Dancing) ピアノ
８．Airport ピアノ
９．Always Man (Hat) ピアノ
１０．?（ピアノとギターユニゾンのインスト曲）
１１．I Can't Stop (Hat)
１２．Backwards Deb (Dancing)
１３．Aye Aye Monster (The Mystakes)
１４．Pride Is A Sin (Dog)
１５．Splane (Dog)
１６．The Desired Effect (Boil That Dust Speck)
１７．Cold Hands
１８．Potato (Sluggo!)
ケネリーはアコギとピアノ音色のキーボードを使用し、主に弾き語り、時にはインストの演奏を聴かせます。客席に話しかけたり、リクエストを聞いたりしてリラックスムードでステージは進みますが、その演奏は凄い。独特の複雑なコード進行で書かれた曲を、ギター１本だけによる全く無駄のないアレンジでさりげなく超絶技を交えながら弾き、その上で声量・表現力とも満点の歌を聴かせます。ギターの音色もカッティングの鋭さや一音ごとの粒立ちの良さなど、普通の人とはワンランク以上上のもので、エフェクター等を一切使わずとも全く飽きさせません。インストの３や６はカントリー風のアルペジオが少しずつ変質していくスタイルで、ジョン・フェイヒーを思わせる感じも受けました。５ではイントロのベースを口三味線でやるなど茶目っ気も満載。また、ピアノ弾き語りの演奏も見事。ギターの演奏ではやはりアメリカーナな要素が強いですが、ピアノの弾き語りではジョン・グリーヴスあたりのそれを思い出させるような面も感じられたのが面白かった。７では歌い始めてから「この曲はZAPPA PLAYS ZAPPAのドラマーのJOE TRAVERSについて歌った曲だ」と歌をざわざわ中断してコメントしたりしてました(^_^;)。８は1983年に21歳の時に書いたという曲。９では観客にコーラスパートを割り振って歌わせようとします。Hermeto Pascoalかあんたは(^_^;)。１０のように右手でピアノ、左手でハンマリング奏法でギターを同時に（しかも結構大概なユニゾン）演奏する場面も。ソロセットの最後は"Potato"で終了しましたが、ここまで１時間３０分。さらに休憩を挟まず日本勢４人をステージに呼んで演奏が続きます。
まずはインプロセッションからスタート。メンバーから是巨人＋大文字のような感じの演奏が予想されましたが、ドラムが菅沼というせいか突っ走りすぎず安定感のある展開が目立ちます。ケネリーの太く分厚い音と鬼怒のシャープなカッティングは対照的。セッションの展開は主にケネリーが指示していたようで、鬼怒やナスノのソロがフィーチュアされる場面も。途中ケネリーがピアノを弾く場面があったのですが、これが爆走する他のメンバーに触発されたのか物凄いスピードで絶句。専任キーボーディストでもここまで弾ける人はそういないでしょう。そして演奏は"Live In Japan"へ。この曲は絶対やるだろうと思っていたんですが、バンドヴァージョンで聴けたのが嬉しかったです。さすがにコーラスは無理でしたがオリジナルに忠実な演奏です。つづいて再びインプロの演奏へ。ここではホッピーの大文字ではおなじみのヴォイス＆ピアノのソロ（呼応してケネリーも朗々としたヴォイスを披露）、菅沼のドラムソロなどを挟み、ザッパの曲"BLACK PAGE"へ。これは"ZAPPA'S UNIVERSE"でのヴァージョンに近い印象。事前のリハは相当苦労していたという話もあとで聞きましたが、なかなかどうして素晴らしい演奏。ケネリーがメインのラインをすらすら弾けるのは当然としても、鬼怒も負けずにユニゾンで付いていきます。先日のZAPPA PLAYS ZAPPAを見に行った知人によると「こっちの方が凄かった」との事。これで本セットは終了。アンコールはケネリー１人が登場し、エレクトリックギターを持って客席からリクエストのあった"MY DILEMMA"をグルーヴィに弾きつつ歌って終了。ノンストップで２時間３０分弱のステージでした。いやー凄いヴォリューム満点のライヴでした。バンドでやった２曲が素晴らしかっただけに、是非次回来日時も同じメンバーで、リハの時間を取ってバンド編成での曲をたっぷり聴きたいところです。