「暴走歌集東京編 〜うた人間のうた〜（金属人間プロデュース）」と題された山本精一の歌ものソロライヴです。山本の歌ものソロは、昨年のクリム・パズル名義のライヴ以来。意外に早いサイクルでの再演となりましたが、前回の内容が非常に良かったので今回も期待大です。
前回同様、ステージの中央に山本が位置し、右手側にバックトラック用のマルチレコーダー（多分ローランドのVS-880）をセット。ギターは前回はレスポール型のでしたが今回はいつもの黒ストラト１本のみ。アンプも２台使っていた前回と異なり、今回は左後方にローランドのステレオコーラス１台のみをセット。エフェクターはIbanezのオーバードライブ、ボスのオーバードライブ、METAL ZONE、ピッチシフター、トレモロ／パン、リバーブ、コンパクト型ディレイ等を使用。
１．（恐れでもなく驚きでもない〜）
２．もの投げるなや（途中中断）
３．あんなに好きだったこと
４．僕らはみんな死んでいる
５．（また目が覚めたら〜）
６．２３世紀梨
７．（あなたは昔凄かった）
８．名前なんて付けたくないうた
９．（豆腐屋のおじさん、失敗し中止）
１０．まさおの夢
１１．（バックトラック＋ギターインスト）
１２．（同じ顔で同じ靴を履いて〜）
１３．（思ったより世界は静かだ〜）
（アンコール）
１４．雨宿りの男
１５．男はつらいよ
１６．泣いてたまるか
１７．（ツァラトゥストラはかく語りき＋何もない）
１８．もの投げるなや
（アンコール）
１９．空の名前
カッコ付きの曲は題名不明のため歌い出しやサビの部分などから適当に付けました。
前回ライヴで多くを占めた「なぞなぞ」収録曲がぐっと減り、代わって新ネタが多数追加された新鮮味のあるセット。１は前回ライヴでも演奏した曲ですが、歌詞の順番が変わっていました。２を歌い始めたところで、エフェクターの電源が全て落ちてしまうハプニングが。結局コンセントを別から取ってすぐ復旧し、いったん引っ込んだ山本も再登場し３から再開ましたが、山本は考えていた段取りが全て飛んでしまったようで、以後は曲順などはその場で決めている様子でした。４はもちろんあの曲の替え歌ですが、山本らしい改変の仕方が面白い。５は前回ライヴでもやった曲。６はハーモニカを吹きながらロボットの声真似をする寸劇風の曲（と言えるのか？）。７はバックトラックを使用。前半のエレクトロニカ風の箇所ではここでも寸劇風の語り、リズムトラックに変わってからは弾き語りの歌に移行。バックトラックと演奏は完璧に同期しているわけではなさそうですが、結果的にはぴったり合っているように聞こえるのは、チャールズ・ヘイワードのそれを思わせます。前回の終盤で演奏した決め曲の８は中盤のここで演奏。９はまたハーモニカを使い、豆腐屋のラッパを模したあと、「おじさん」と言うべきところを「お母ちゃん」と言ってしまい、そのまま演奏中止(^_^;)。続いてこれも前回本編ラストでやった１０を演奏。このあたりの質の高い歌ものとトホホなネタものの落差の大きさが山本らしさと言えるかも。１１はヴィブラフォン系のミニマルなバックトラックとインプロ風のギターが絡むインスト。ここからどう展開していくかと思ったらそのまま唐突に終了。１２は今回初めて聞く曲。終盤にダイナミックに展開するのが面白い。本編ラストは前回も終盤で演奏した曲。これをラストに持っていくところにこの曲に対する自信がうかがえます。最後はギターの単音フレーズからフィードバックトーンを残して終了。本編はここまでで約１時間。勿論すぐにアンコールへ。
山本は始める前に「トイレに行くなら今ですよ。１時間ぐらいやりますから（笑）」というわけでアンコールとは名ばかりの実質第２部へ。１４はリズミックなバックトラックに弾き語りを乗せる形態の曲。１５〜１６は個人的にこの日のハイライトの「渥美清メドレー」。１５はFBIの客出しBGMで聞いたことがありますがステージで聞くのはこれが初。１６は先日の大友デュオでもちょっと歌っていた曲。イントロなどがトラッドぽいアレンジなのが面白い。山本「いい曲だよね。最近はこの２曲ばかり歌っていて、今日もこれを歌うために来ました」最後の曲と紹介された１７はバックトラックに「ツァラトゥストラはかく語りき」と電子音をミックスしたものを流し、それに乗せて「何もない」と歌うというネタ（？）。PAの音量を目一杯上げさせたり、何度もやり直したりとさんざんやった挙げ句、マイクを落とした大音量のノイズで終了(^_^;)。これで終わるのはやはり何だということで最初に中断した１８を今度はきちんと演奏してアンコールセットは終了。再度のアンコール（というかこれがホントのアンコール）では、この曲と「夢の半周」「沈黙」の３曲の中から観客に選ばせてこの曲に決定（「夢の半周」はPIT-INNでやりましたからね）。アンコールセットは計４０分ほどで終了。最初の宣言通り１時間とは行きませんでしたが、結果的にヴォリューム満点の内容となりました。
前回・今回と披露したアルバム未発表曲を集めれば、もうアルバムを１枚作れそうな質・量となってきました。「なぞなぞ」からもう４年となることだし、そろそろリリースを検討して欲しいところです。