今回の来日メンバーは、アリム・カシモフ(vo& perc)、アリ・マンマドフ(tar)、ラウフ・イズマモフ(kemancha)、ファルガナ・カシモヴァ(vo&perc)。当初予定では打楽器奏者が入ってカシモフの娘さんのファルガナは入っていなかったのですが、これはむしろ嬉しい変更です。

ステージは向かって左からラウフ、アリム、ファルガナ、アリという並び。全員、一段高くなったところに座布団を２枚敷いて座って演奏します。ケマンチャはブズーキに近い弦楽器。スチール弦で複弦、３コース張っているそうです。フレットが打ってありますが、間隔が不規則でこれで独特の音階を出せるようになっているのがよく分かります。タールは擦弦楽器で、音域的にはヴァイオリンに近いようでしたが弾き方は縦に構えるもの。弓で弾きながら余った指でピチカート風に弾く奏法も見られます。アリムとファルガナは歌と同時にパーカッションも演奏。使用するのは大きめのハンドドラムと、内側に多数の金輪を付けてベル的な効果も加えた小さめなものの２種類を、前者はファルガナが、後者はアリムが主に使用。もう１つ、さらに小さいハンドドラムも用意していましたがこちらは使用しませんでした。

開場前にこの日のプログラムが張り出されていました。全５曲、休憩は無し。

１．Gunlarim atusur
２．Yaz mahnisi
３．Innabi
４．Getma-getma
５．Qahargah mugam
（アンコール）
６．Leilam

１はファルガナ抜きの３人での演奏。いきなり「よろしくお願いします〜」とあの節回しで歌って笑いと拍手を取ります。アリムの独特の節回しの歌のパートと３種の楽器によるインストパートが交互に出てくる形で曲が進行。資料によるとある程度基本となるフレーズがあって、それを即興的に繋げていって１５分近い長大な曲としていくようです。出音は小さめですがインスト的にも音数が多く技術的にも凄い。２はアリムと入れ代わりでファルガナが入った３人での演奏。ファルガナの声は芯と張りのあるもので、父親と全く違ったキャラクターですがこちらも素晴らしい。特に中盤近くの音域の広いこぶしを交えながらの超ロングトーンは圧巻。３以降は４人での演奏に。３はこの日の中では唯一短い５分弱の曲で、アリムとファルガナの掛け合いヴォーカルを中心に進行。２人とも打楽器を兼任するため、前２セットと比べてリズム面でもかなり強力化。４も同傾向で１５分と長めのセット。本編最後の５は実に３０分近くに及ぶ超ロングチューン。アラブ色の強い高速ユニゾンアンサンブルを軸に、次々と歌パートとインストが交錯していきます。トランス的要素もかなり強くなり、ノってきたアリムはここで超高音のヴォイスも聴かせます。終了後も盛大なアンコールの拍手は鳴りやまず、２度ほど挨拶のみで引っ込みましたが３度目でもう１曲演奏することに。曲の冒頭で今度は「ありがとうございました〜」と父娘でやってました(^_^;)。MCが無かったですが、アゼルバイジャン語で話されても分からないから当然か。今度はバルカン風のフレーズを軸にした短めの曲でを４人で演奏して終了。その後も再アンコールの拍手は続き、最後は父娘２人で挨拶してステージは終了。トータル１時間４０分ほどの内容でした。

かなり渋めではありましたが素晴らしい演奏でした。次回来日時は是非ともMEMアンサンブルと一緒に来日してほしいところです。