吉田兄弟 7/25

吉田兄妹

2012/7/25 荻窪VELVET SUN

吉田隆一(bs)と吉田アミ(vo)のユニット、吉田姉妹の拡大版ユニットによるライヴです。今回はこの２人に長男の吉田達也(ds)、末っ子の吉田のの子(as)の２人が加わり４人編成に。吉田のの子は札幌出身、ニューヨーク在住でジョン・ゾーンが師匠、多国籍グループ「ペットボトル人間」のメンバーで現在帰国中というプロフィール。編成的にはどうもアンバランスな印象で「吉田言いたいだけちゃうんか」という出落ち的なユニットになる恐れがありますが、果たしてどうなるか。会場のVELVET SUNはUSTREAMなどで中の様子は見たことがありますが来るのは初めて（ちなみに吉田達也も出るのは初めてだとか）。車道に面していて窓ガラスの下側から演奏中の様子を外から見ることが出来ます。高さ的に子供が見るのにちょうど良く、演奏中立ち止まって見ていることがたびたびありました。

ステージ向かって左から吉田隆一、吉田達也、吉田アミ、吉田のの子という配置。吉田達也は１タム１フロアのセットで、セカンドスネアに浅胴・低チューニングのセカンドスネアを加えたセット。ドラムは生音で他の音はPAを通してそれにバランスを合わせる形となります。先に書いたとおりこの会場のライヴはUSTREAMで流されることが多いのですが、この日はお休み。何か理由があるのかと思ったら「店長が休みで機材操作できる人がいない」という理由だとか(^_^;)。

１．４人での演奏
２．吉田隆一＋吉田のの子
３．吉田達也＋吉田アミ
４．４人での演奏
（休憩）
５．吉田アミ＋吉田のの子
６．吉田隆一＋吉田達也
７．吉田のの子＋吉田達也
８．吉田隆一＋吉田アミ
９．４人での演奏
（アンコール）
１０．常に３人以下というルールでの演奏

まず４人での演奏からスタート。全員が爆走するフリーパートからドラムが叩き出す定型リズムや変拍子をベースに展開が進んでいく形。これに両サックスとヴォイスが自由に絡んでいきます。ベースに当たる部分をバリトンが担当し、ヴォイスが超高音のノイズのような音を出す場面など、予想以上にバンドとしてバランスの良い音で、しかも普通にかっこいい演奏。これには驚きました。ここはこのメンバーを集めた吉田隆一の眼力に敬服です。以後は「グッパー」による組み分けでデュオを２つやることに。吉田のの子によると札幌では「グッチー」が一般的で、吉田達也はどちらも知らなかったそうですが、これは地域というより世代による差かもしれません（ちなみに私は知らなかった派）。２サックスのデュオはバリトンが提示する基本リフ＆リズムを軸に展開し、フリーパートは倍音の干渉効果も加わって凄い音空間に。続くドラム＆ヴォイスデュオでは、吉田アミがMacBookをステージの床に置き、足でスクロール操作しながら何やら奇妙な文章を朗読（時折絶叫や超早口も交える）し、これにフリーなドラムが加わる形。何を読んでいるかと思ったら「キ○ガイな人の作ったホームページの文章」だそうです...(^_^;)。この時点でやや中途半端な時間だったのでもう１セット４人でやることに。吉田隆一はバリトン本体を大きく動かして音を揺らします。この音を軸にしたドローン風のアンサンブルを導入にその後はポリリズミックに展開。セカンドスネアを手で押さえてピッチを変える奏法を多用します。前半は約４０分で終了。

後半は前半やったデュオをまずばらけさせ、組み替えてのデュオからスタート。姉妹デュオはアルトサックスの吹き口を外しての音とのヴォイスのデュオで、吹き口を戻して吹こうとしたところでタイミングよく（？）終了。兄弟デュオはバリトンによる太く力強い低音メロディにずっしりとしたリズムが乗る男性的な（？）音。バリトンと吉田達也のドラムの音の相性は良好。見逃してしまったさがゆきを加えたトリオのライヴ、見たかった...。そしてまだやっていなかった２つの組合せは自動的に決定。アルトとドラムのデュオは前のセットとは一転、スピーディかつフリーキーな演奏に。このあたりの演奏のキャラクターの変化は面白い。そしてオリジナル兄妹のデュオに。これはアンサンブル志向のバリトンの演奏とノイジーなヴォイスの強烈なミスマッチ感が個性的。なんとなくZNRあたりを思い出してみたり。最後は３たび４人での演奏。ここまでの持ち技を総ざらいしたような演奏に。吉田のの子は再びアルトの吹き口を外し、今度はコップの水の中に突っ込んでブクブクという音を出すのが面白い。吉田隆一も対抗して（？）吹き口を外してバリトンの本体側を吹いたり、マイクを持ってハードコアスクリーミングを見せたりします。アンコールセットは吉田隆一の提案で、「必ず３人以下になるように」というルールで演奏。ここでは吉田アミはほとんど声を発さず、マイクや空き缶を使った物音系の音中心。最後は発案者のバリトンのソロ演奏で目論見どおり（？）終了。後半は約４５分の演奏でした。

最初に「出落ち」とか思ってしまったのが大変申し訳なくなるほど質の高い演奏でした。各デュオもそろぞれ違ったタイプの演奏が聴けて飽きませんでした。欲を言うなら吉田達也＋吉田アミのヴォイスバトルデュオなんてのもあると良かったんですが...。なお、吉田兄妹はさらにメンバーの拡張をもくろんでいるようで、吉田姓のミュージシャンを募集しているようです(^_^;)。個人的には終演後に名前の挙がったシタールのヨシダダイキチを入れた編成をぜひ見たいところです。本物の吉田兄弟（津軽三味線の）との共演は果たして実現するでしょうか...(^_^;)。

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