PHEW＋山本精一&千住宗臣

2014/9/19　渋谷WWW
「PHEW＋山本精一&千住宗臣」という名義でのライヴです。2012年の同所でのライヴは弾き語りデュオとバンドセット、2013年のSUPER DELUXEでのライヴはそれぞれのソロセットで一緒の演奏は無し、と続いていたので今回もどういう形での演奏になるかは当日見てみないとわかりません。また、PHEW単独での演奏もここ数回毎回違った楽器（と言っていいものか）構成で行われており、今回はどうなるかも気になります。会場のWWWはこの日は1階席が椅子席になっているのが目を引きます。2段目以降は普通に立ち見でしたが。

ステージ向かって左からPHEW、千住、山本という並び。PHEWはテーブル上にミキサー、EMS AKSシンセ、リズムボックス、エコーチェンバー、カオシレーター等を使用しているようでした（詳細機材は未確認）。中心になっていたのはAKSシンセで、これで持続的な電子音を出してエコーチェンバーで重ねて鳴らしているようでした。また、モールス信号を思わせる電子音も要所で使用。タンブーラマシンと３台のリズムボックスを中心にしていた先月のソロライヴとは大きく変わっています。千住は１タム１フロアのセットを使用。スネアの上にはタオルを置いてミュートして使用。山本は黒ストラトを使用。エフェクターは足元にDOD 250 PREAMP/DELAY、オーバードライブ、トレモロパン、ディレイ２台（１台はループ用）、テーブル上にフェイザー、ピッチシフター、リバーブ等を使用。面白いのがアンプのセッティングで、山本の側に１台、反対側のPHEWの後ろ側にもう１台のアンプとベースアンプをセット。２台のギターアンプはディレイ音を左右に飛ばし、ベースアンプからはギターの低音部が分けて出されているため、１台のギターから出ているとは思えないほどの広がりと音域の広さを実現しています。

１．オーブル街
２．バケツの歌
３．飛ぶひと
４．鼻
５．まさおの夢

まず前半のセットは直前にPHEWがネットで予告していたとおり、「幸福のすみか」からの曲を中心に演奏。冒頭はPHEWと山本の２人のみがステージに登場し、PHEWの中音域を中心にしたシンセのドローン音に山本がそれに溶けこむようなアンビエントギターを加える形でしばらく進行。その後千住が出てきて１の演奏へ。以後の演奏は山本と千住のバッキングに、やや控えめにPHEWの電子音が加えられる形で進行。PHEWの音は基本的にシンセのセッティングは同じようでしたが、要所で音を抜いたりバランスを変えたりして変化を加えます。PHEWの音が入るだけでぐっと全体のアンサンブルに奥行きが出てくるのが面白い。前半の曲は山本の歌が中心になりますが、PHEWがアルバムとは違った形でコーラスを入れたり、あるいは入れなかったりするのが面白い。４はライヴごとに違った音域で歌いますがこの日は高音域でした。前半は約４０分ほどで終了。

後半はPHEWのソロセットに山本と千住が音を加える形で進行。まずはPHEWが前半とは異なりシンセのセッティングを変えながら音を多重的に重ねてかなり大音量のドローンアンサンブルを形成、これに山本のアンビエントギター、次いで千住の断続的な早いリズム、そして山本がこれに鋭いカッティングを加えていく形で進行。この場面は非常にスリリング。さらに山本が音量レベルを大きく上げたファズトーンを断続的に入れ、さらにPHEWが朗読のようなヴォイスを加えてさらに緊張感を上げていきます。

続いてPHEWはリズムボックスでミドルテンポの３拍子のリズムを出し、これに千住がタム打ちを中心にした演奏を加え、PHEWがシンセの音をスペイシーな発信音に変えて加え、さらに歌と山本の自由度の高いギターが乗る形で展開。山本がピッチシフターを使って電子音的な音を使用する際に、ベースアンプからの低音がきっちりと分離して出ていたのが目立ちます。

山本が”Powder”のイントロを思わせる刻みリフ（トレモロも交える）をディレイループで回し、これに千住が淡々としたリズムを、さらに山本が同曲のベースラインを手弾きで加えます。これにPHEWがそれとは別の歌を重ねていきます。この歌が「私の大切だった人達／きっと／いつかまた／どこかで／会いましょう」といった歌詞で、バックの音とPHEWの歌い方も相まってまるで涅槃から（もしくは涅槃に向かって）歌っているように聞こえて物凄く引きこまれました。後半はこれら３セットをノンストップで演奏して終了。

そしてアンコールセットは前半に準じた形で「幸福のすみか」を演奏。これも淡々としていながら物凄く吸引力のある演奏。中間の展開部で千住がリズムを止めて山本のディレイギターのみとなるところも効果的。後半はアンコールも含めて約１時間の演奏でした。

見る前までは「幸福のすみか」収録曲に期待していたんですが、実際見てそれ以上に後半のPHEWの世界に山本＆千住が加わった音の凄さに圧倒されました。このままCD化してもいいのではないかと思うほどの完成度の高さ。欲を言うならPHEWの機材操作がよく見えるポジションで見れたら文句なしだったんですが…。

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