内橋和久、広瀬淳二 12/12

内橋和久、広瀬淳二

2014/12/12　吉祥寺FOXHOLE

内橋和久と広瀬淳二のデュオライヴです。この２人は古くはササキヒデアキとのステレオドローム、アルタードのゲストという形で共演はしていますが、純粋なデュオライヴは初とのこと。これはちょっと意外です。

ステージ向かって左に内橋、右に広瀬という並び。内橋はdaxophoneとGodinのギターを使用。エフェクターは店にあった横長のテーブルに並べる形。普段とはちょっと違った配置で面白い。使っていたのはExotic BB+（ファズ）、Digitech Whammy（ピッチシフトペダル）、Electro Harmonicsの16Sec.Delay、BossのGiga Delay、StrymonのFLINT（リバーブ＆トレモロ）。FLINTの出力は片方をアンプに、もう片方をミキサー経由でPAから出力。これはdaxophone用だったようですが、ギター使用時もPAから音が出ていたのでかなりの音圧に。広瀬はテナーサックス１本のみを使用。マイクを１本立ててPAから出力。daxophoneとの共演時はマイクからの距離をとってバランスを保っているようでした。ほぼ全編にわたって吹き続けていたため、演奏中何度もマウスピースを交換していました。

１．まず前半は全てdaxophoneを使い、比較的短めの５セットを演奏。この３日間山本精一とのギターデュオが続いていたため、daxophone使用率が高かったのかもしれません。まずは写真の一番右の葉っぱのような形のタングを使用。高音域の音数の多いタイプの演奏で、広瀬もそれに呼応するかのような演奏。両者の高域周波数音が共鳴する場面はさすがに強烈。両者とも忙しく引き続けたせいか、演奏終了後内橋は「疲れた」でも広瀬のほうがずっと疲れているような気が(^_^;)。

２．続いて左から３番めの、鋭くえぐれたタングを使用。内側のえぐれの部分に弓を当て、回すようにして低音の長いドローン音を出し続ける場面が印象的。広瀬もここでは中低音域での演奏。

３．右から４番目、長方形の先端に鳥の頭のようなものが付いているタングを使用。軋み音のような金属的な高音を中心にしたノイジーな演奏。広瀬は高音のブロウで対抗。

４．左から４番目、大きな穴の空いたタングを使用。ここでは弓ではなく棒を使ってチューンドパーカッションのような奏法で演奏。広瀬は落ち着いたメロディアスな演奏から、後半は短く音を区切るパーカッシヴな音で対応。

５．左から３番目、細く尖ったタングを使用。ダックスを細かく振動させてミュージカルソーのような振幅の大きいビブラートを多用した演奏。daxophone演奏時は基本的にはエフェクターは細かく操作しませんが、ここではディレイをかなり深めにかけて使用。それにしてもdaxophoneの奏法やタングの交換による音色表現の幅広さと、それにテナー１本のみで自在に対応してみせる広瀬の懐の広さが印象に残りました。ここまで約４０分。

６．後半はまずギターを使った演奏でスタート、「せっかく持ってきたんだから使わないと（笑）」ピックアップ横のボタン（？）を抑えて発生させたノイズをエフェクター加工して電子的な持続音を発生させ、これをベースにエレクトロニカ的な音空間を設定。広瀬はこれにメロディアスな演奏を加えていきます。内橋はここではあまりまともにギターは弾かず（弾いてもフレーズ感の薄いフリーな演奏）、主に忙しくエフェクター類を操作して変化度の大きい音を繰り出します。その変化幅の大きさはdaxophoneの続きを聞いているようです(^_^;)。ベースパートをループ化してこれに奇妙でリズミックな演奏を乗せていく場面が面白い。

７．引き続きギターを使用した演奏。ここではダックスを使って弦をこすり、まるでグリッサンドのような奏法を見せます。その後はまるでシンセベースのような音色でのリフを中心にファンキー（お言っていいのやら）な演奏を乗せたり、ギターのスイッチを使った人力トレモロなども使用。

８．ここで内橋はギターを置いて再びdaxophoneへ。広瀬が「またそれ？」的な反応をするのが可笑しい。ここでは右から３番めの先端が斜めになった形状のタングを使用。ここではファズを加えたノイジーな音での演奏。タングの直線度が高いほどノイジーな音が出るというのが面白い。

９．左から２番め、板状のタングを使用。ここでは根元付近を手で抑えて先端を指で弾き、ベースの単音のような音を出し続けます。これまでにはないシンプルでヘヴィな音に。そしてさらにこれにディレイを加えてリズムを作り出しますが、これがうまいこと５拍子になっているのがさすがというか何というか。広瀬も中低音でのロングトーン中心の演奏で、これまでとは全く違ったタイプのアンサンブルを聞かせて終了。後半も約４０分でアンコールは無し。

芸達者な２人ならではの、初デュオとは思えない多彩でユニークな演奏ばかりで非常に面白かったです。今回広瀬はサックスのみでしたが、ノイズマシーンとのデュオなんてのも見てみたい気もします（出来る場所は限られるでしょうが(^_^;)）。