HAPPY FAMILY
2025/12/13 吉祥寺SILVER ELEPHANT
ハッピー・ファミリーのワンマンライヴです。私がライヴを見るのは2015年の同所のワンマンライヴ以来10年ぶり。今年Cuneiformレーベルの40周年ということでミニアルバム"4037"をリリースし、それに合わせてライヴを行うことを予定していましたがブランクが長くリハ等に意外に時間がかかってこの時期になったとか。10年ぶりということで超満員の盛況、私も開催を知ったのが遅かったためチケット取り遅れて立ち見となってしまいました。
ステージ向かって左から森本、市川、永瀬、泉谷という並び。森本はNord Elecrtro 3とNord Lead、その上にコルグの小型キーボード（おそらくmicroKEY25）とその音源となるタブレットを使用。Electro 3はエレピ、オルガン等、Leadはアナログシンセリード、ミニキーボードはメロトロンぽいストリングス等のワンポイントで使用。３つの音はミキサーでまとめられ、フェンダーのアンプから出力（他の生音に負けないようにするため？）。市川はG&L L-2500 ５弦ベースを使用。エフェクターはEBS MultiComp、ZOOM B3、Tech21 SansAmp Programmable Bass Driver DI、小型の8バンド・グラフィックイコライザーを使用。永瀬は１タム１フロア、高チューニングのセカンドスネアというセット。左右に大小の穴あけチャイナシンバルと小型の円形メタルを配しているのが特徴。泉谷はInfiniteのテレキャスターモデルのギターを使用。大阪の小規模なギターメーカーの手によるもののようです。エフェクターはCry Baby（ワウペダル）、OKKO BLACK BEAST（ファズ）、Brush Eight Drive X2（ブルースブレイカータイプ）、strymon BRIG（ビンテージタイプのディレイ）、Old Blood Noise Endeavors Dark Star V3（リバーブ）、strymon IRIDIUM（アンプ&キャビネットシミュレーター）、Walrus Audio Canvas STEREO DI/LI（エフェクターというよりダイレクトボックス）を使用。アンプはマーシャル。
１．原因において自由な行為
２．流麗にして狡猾
３．ピグマリオン
４．ヒポクリシー
５．飛ぶ男
６．いわいづつ
７．水中禅問答
８．暴走機関車
９，ノード社とリード社
１０．パルタイ
１１．岩と若者
（アンコール）
１２．一炷
まずいきなり新曲１、２でスタート。これは4037の後で森本が書いたという新曲。１は５＋６拍子でスタートし、その後８拍子、５拍子、６拍子、果ては２１拍子（６拍子×２で半拍少ない）と次々にリズム形態が変異していく曲。題名は刑法の責任能力についての法理から取ったとか。さすが司法試験合格者(^_^;)。しかし曲とタイトルの関係性は聞いててもよくわかりません(^_^;)。２は７拍子からスタートしその後６＋７拍子や９拍子、５拍子、７拍子とこちらもトリッキーにリズムが変わっていくノリ難い曲。この曲はピアノソロのデモヴァージョン的な音源がCuneiformのBandcampで公開されているとか。もう１曲"Fort Of Responsibility"というのも公開されています。１〜２では森本は終始硬質なエレピでの音で演奏。他の音が入らないためソリッドで構造特化形のサウンドと感じます。後で語ったところによるとアルバム１枚分のマテリアルはすでに完成しており、近くレコーディングに入るとのことでフルアルバムのリリースも近いかもしれません。３〜５は"4037"収録曲を演奏。個人的にはこれらの曲を初めてライヴで聴くのを期待していましたが予想通り素晴らしい演奏。そして曲の前には作曲者がMCをするという企画が。泉谷は森本欠席の3人編成でのライヴの際にやったことはありましたが市川は初。泉谷はこの日物販購入者に配布された図形楽譜についての話。基本このバンドは楽譜を書かないそうで、他のメンバーで楽譜を読めない人のために永瀬が図形楽譜を作って、それに楽譜読める人がコードや音符を書き足して使っているんだとか。どんなのかは買った人だけのお楽しみです(^_^;)。市川は当初その話をするつもりで泉谷にネタを取られたため、数年前にあったと言う不幸な身の上話に。その体験が４に反映されているとかいないとか。森本作の５については、タイトルが小説等から取られていると言う話で、５は安部公房の遺作から、他にも７は京極夏彦の鉄鼠の檻から、１０は倉橋由美子の小説から取られているんだとか。５は飛ぶというより「浮遊する人」というイメージの曲展開。６〜７はサードアルバム"Minimal Gods"からの曲（正確には７は初回日本語盤ボーナス曲）。この辺りからオルガンやシンセの音が増えていきます。７ではタブレットを直接操作してリズムマシンの音を鳴らします（そして市川が横からちょっかいをかけるように手をだす）。８〜９はセカンド"Toscco"収録曲。９は森本がNord Leadを買ってきて自慢している様子をもとに泉谷が作ったとのことですが、森本は今でも初期ヴァージョンを使っているとの事。残念ながらヴィンテージで価格高騰しているという事はないそうですが...。ここまで来るとわかりますが最後の１０〜１１はCuneiformからリリースされたファーストアルバム収録曲。１０は2014年のライヴでは演奏されていますがそれ以前のライヴではほとんど聞いていないだけに個人的にはレア曲扱いです。この曲のような初期にあったチェンバーロック的暗さもこのバンドの大きなカラーだと個人的には思っています。泉谷によると８や１１のように勢いで行ける曲よりも、この日の最初にやったような曲の方が演奏は難しいとか。アンコールは本編ではやらなかった１２を、やはり永瀬のMCから演奏。時期柄、忘年会の締めの挨拶みたいな感じになってしまってちょっと笑ってしまいました。曲的にはこのバンドには珍しい即興的な要素（主にドラムの自由度ですが）が多い曲なので、色合いを考慮しアンコールに持ってくるのは好采配ではないかと思います。結局休憩なしで２時間弱、途中MCを挟みながらのゆったり進行とはいえ高密度のライヴでした。
ミニアルバムのリリースまで10年ほど音沙汰のなかったバンドですが、今回のアルバム制作等の情報により、今後の活動に俄然注目度が増しました。動向を注目していきたいところです。
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