Godspeed You! Black Emperor
2025/12/16 神田スクエアホール
ゴッド・スピード・ユー！ブラック・エンペラー（GY!BE）の来日公演です。私がライヴを見るのは2016年以来9年ぶり。今回は12/15に大阪Yogibo META VALLEY、16〜17の両日がここでの東京公演というスケジュール。大阪は600、東京は1,000のキャパシティですが早々に前売完売で、17日は追加公演という扱いでしたがそちらも同様。個人的にはこのバンドは曲の入れ替えがあるため17日も行きたかったですが発売に気付くのが遅れたため１日のみの観戦です。しかし音楽性や商売っ気のなさを考慮すると人気ありますねえ。今回はスマッシュの招聘ということからか、以前はなかった物販（それも音源よりTシャツやトートバッグ等マーチャンダイズ系が多い）があったり、場内の撮影等の禁止がかなり厳しくアナウンスされています。この辺りは非商業主義を全面に出していた今までとは大きな違い（大阪の画像や映像はSNSに結構上がっていたので禁止ではなかったのかも）。まあファンとしてはグッズは欲しいし、この会場構成で頭上にスマホを掲げて撮られると後ろの客への迷惑度が高い、などの点があるため一概には良し悪しは言えないのですが...。
今回はあまりいい場所が取れなかったため前回のレポを参照しつつ記載。もし直前で変わっていなければメンバー及び配置は前回同様、向かって左からMike Moya（g、テレキャスを使用）、Efrim Menuck（g、前回使ったレスポールではなくビザール的デザインのメーカ・型名不明のギターを使用）、Tim Herzog（perc）、Mauro Pezzente（b、プレベを使用）、Aidan Girt（ds）、Thierry Amar（b&cb、エレクトリックはジャズベを使用）、Sophie Trudeau（vln）、David Bryant（g、アームつきレスポールを使用）という８人。後方にそれぞれのアンプが置いてあるのは前回と同じで、Moyaはフェンダー、Efrimはフェンダー＋マーシャル、SophieはVOXのを縦置きにして使用、Davidはフェンダー＋マーシャル。その横にもう１セット黒のレスポール＋VOXのアンプがセットされていますがこれは未使用。大阪では先の通りに上がっていた画像を見るとDavidが黒レスポールを持っていたのがあったので、曲によって使い分けているのかもしれません。今回はMladicはやらないのでステージ中央は空いています。Efrimの足元には前回同様サンプラー（ローランドのもの？）が置いてあり、それを使って出し入れしているようでした。ドラムセットは右側が１タム１フロアの標準的なセット、左側はベースアンプに隠れてほとんど見えませんでしたが前回と同じなら左手側から上向きにセットしたバスドラ、タム２つ、フロアタム、中央にスネアという配置か。お馴染みのグロッケンシュピールも準備。Sophieはアコースティック・ヴァイオリンをコンタクトマイクで拾ってエフェクターを通して出力。後方のスクリーンと客席最後方のフィルム映写機４台も健在です。
１．Hope Drone
２．SUN IS A HOLE SUN IS VAPORS
３．BABYS IN A THUNDERCLOUD
４．RAINDROPS CAST IN LEAD
５．Fire at Static Valley
６．PALE SPECTATOR TAKES PHOTOGRAPHS
７．GREY RUBBLE – GREEN SHOOTS
８．Static - Chart #3 - World Police and Friendly Fire
９．East Hastings - The Sad Mafioso
（セトリはsetlist.fmのを参考にしています）
昨年リリースされた最新作"No Title As Of 13 February 2024 28,340 Dead"から２、３、４、６、７と５曲を演奏。プラス５、８、９はそれ以前のアルバムからの選曲で、最新作５曲は固定で後３曲は毎回入れ替わっていたようです。ちなみに大阪と東京２日目はBosses HangとGathering Stormが後半に演奏され、東京２日目は５もMonheimに入れ替わっているようでした。やはり２日とも行きたかった...。
まず前回同様、PAからドローン音が流れ出し、続いてThierryとSophieの2人が現れ（前回はドローンのみが長かったが今回は割とすぐ出てきた）、cbとvlnの弦楽ドローンからスタート。ここにメンバーが少しづつ入っていって集団即興的にドローンが厚くなり、最後にEfrimが入ってピークになったところでクールダウンし２の演奏へ、という流れ。４では冒頭のシンバル弓弾きパートにThierryも参入。５での５拍子と８拍子の組み合わせ、６の７拍子と６拍子の組み合わせなど、この辺りは変拍子要素も高めたセット。前回は"Asunder..."のフルセットが入っていましたが今回は曲が比較的コンパクト（あくまで当社比ですが...）なので、一般リスナーには入りやすい構成ではなかったでしょうか。まあハードコアなリスナーは"Asunder..."や"Mladic"のような超耐久ロングチューンがないとちょっと寂しいかもしれませんが...。ドラムは基本的にAidanが叩き、6、7、9はTimに交代。交代時はスツールとハイハットも交換となるのが面白い。新作コーナーが終わり、いよいよ"Chart #3"のヴォイスサンプルSEからThierryのコントラバスによる"World Police"のイントロが流れ、個人的にはかなりアガりました。前回2016年の東京２日間ではこの曲はやらなかった上、マグマとユニヴェル・ゼロが合体したようなこのバンドで最もプログレ度が高い曲だけに感慨はひとしお。さらに続いてファーストアルバム収録曲の９へ。私の立ち位置の関係か今回は特にDavidの弾く生音ぽいギターのフレーズが非常に分離よく聞き取れたのが面白かった。逆にMikeの音はEfrimのド派手な音に埋もれてしまった印象。まあこちらはあえてそういう音選びをしているのかもしれません。この曲の終盤の爆走度はこの日最高度。そして打楽器2人を除く全員がドローン音を残して一人ずつ退場し、誰もいなくなったステージ上で音が鳴り続けます。前回はここでメンバーが一人出てきてアンプを１つづつ消してまわって終了でしたが、今回はTimとMauroの2人が出てきて、各人のエフェクターやアンプを調整して周り、少しずつ音像を変えながらかなり長時間鳴らし続けます。2人が出てきてから音が全部消えるまでゆうに10分近く、ドローンアンサンブルが続きますがずっと聞いているとちゃんと各人の音が聞こえたり引っ込んだりして、ほぼ１楽曲のような感じで楽しめてしまうのが面白い。もちろん観客もこの途中で帰ったりせずにずっと聴いています。そして最後に残ったSophieのトレモロがかかった音が消えていって終了。もちろんアンコールは無し。ここまで実に２時間弱ノンストップのプレイタイムでした。
改めて認識しましたがこのバンドはプログレの「末裔」ではなく、ポストロックも飲み込んでさらに巨大化しながら走り続けるプログレの「最新形態」だと思っています。この会場は音はまずまずですが、やはりフラットで何もなく奥行きのある構造のためオールスタンディングでこのバンドを見るにはちょっと厳しいと感じます。次回はまたDuo Music Exchangeあたりでやって欲しいですが、集客を考えると難しいでしょうか...。
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