想い出波止場／VUOY（日TRATTORIA MENU.117）全15曲 55分05秒 定価\2,718
実は私は想い出波止場はライヴ、ＣＤともにまともに体験したことがない。ライヴについてはたまたま都合が合わなかっただけなのだが、ＣＤは雑誌記事やインタビュー等から入ってくるイメージ、つまり「異常にスタジオワークに凝っており、多少作り込みすぎのきらいがある」というのがどうも自分に合わなそうで、知らないうちに敬遠していたようである。山本・津山の他の主要ユニットは大体見聴きしているので、理不尽な話ではあるのだが。
さて内容だが、ブレイクビートやトリップホップ、ドラムンベースといった流行り物のリズムが随所で使われている。ここで面白いのは、打ち込みはあまり使わずに大串・一楽の生ドラム・パーカッションを使用している点。最近のライヴシーンは特にドラム奏者の力量レベルが異常に高く、「複雑なリズムパターンを高速で演奏できる」という打ち込みのイニシアチヴが無効化している。そうなると特殊な効果を狙う以外は、ノリや揺らぎの微妙な表現が出来る生演奏の方がずっと質の高いものが出来上がるのは当然の話。この戦略は見事に成功している。
実際聴いてみると確かに録音に凝ってはいるのだが、あまりに作り込みすぎてついていけないというマイナス印象は全く受けなかった。彼らの作っている音楽は「時代の先端の音楽」ではなく「マイブームな音楽を作っていたらそれが時代の先端になっちゃった」という事なんでしょう、きっと。
97年３月のライヴのページ