V.A. / GONG YOU ARE REMIXED（英GLISS RECORDS GLISSCD001）２枚組全16曲 61:34、62:39
９月のゴング再来日に合わせたかのように、名作"YOU"をリミックスするという企画のアルバムが出た。制作がGLOなどのアルバムを出しているレーベルで、EXECUTIVE PRODUCERにマイク・ハウレットの名前が並んでいるので、ゴング公認と考えていいだろう。ちなみに、続編もすでに出ることが決まっているようで、ケン・イシイらの参加がアナウンスされている。
さて、私にとってこの"YOU"は生涯ベストアルバム候補No.1の作品であるのだが、その理由の一つが非常に多様なサウンドがしかも同時に鳴っているという点。その中には超ハイテクジャズロック、スペース・シンセ、コズミックなギターソロ、ジリのアンビエントなヴォイス、そして勿論アレンのストーリーテリングも含まれるのだが、これだけ多様な音が同時に鳴っている割には、雑然とした印象は全く無く、実にすっきりしている。これはアレンやサイモン・ヘイワースの力量によるのか、はたまた偶然の産物なのかはわからないが、とにかく「奇跡的な状態」ではある。
こうして"YOU"の中で鳴っている多様な音はどれも単独で聴いても充分魅力的であるわけで、このリミックス作の中でも、例えばYAMATAKI EYE（また名前が変わっているぞ）のように"MASTER BUILDER"のドラムとリズムギター「だけ」を抜き出してエディットしたトラックがもの凄く魅力的に感じられるのだ。特にこの曲のこのドラムのトラックを選んだEYEの感性には脱帽。私がPIERRE MOERLENをフェイバリット・ドラマーと考えているのは、この曲でのプレイがあるからである。
EYEのトラックが代表的なのだが、他でもオリジナルのサウンドを独自の解釈でセレクトした（あるいは大胆に切り捨てた）トラックは魅力的だ。YOUTHによる"SPRINKLING OF CLOUDS"、ELECTRIC SKYCHURCHの"PERFECT MYSTERY"、ASTRALASIAの"YOU NEVER BLOW YOUR TRIP FOREVER"、GREGORIO & STEPHEN BUDDの"MASTER BUILDER"、DOOFの"YOU NEVER BLOW YOUR TRIP FOREVER"らがそう。特にDOOFのテイクは曲構成はそのままにvo,kb,ds以外のパートを思いきって奥に引っ込め、最後は全ての音がシンセの渦に飲み込まれるという大胆なミックスでオリジナルをしのぐほどのスペイシーな空間を作り上げている。ELECTRIC SKYCHURCHのトラックでは、ドラムパートを小節単位で編集して生ブレイクビーツとも呼べそうなユニークな効果を出している。面白いのは多くのトラックでティム・ブレイクのシンセパートがオリジナルに近い形で残っている点。さすがにこのシンセの音色・フレージングは最新のテクノロジーを持ってしても太刀打ち出来ないか。
ただし、オリジナルの上物だけを残してテクノリズムをかぶせるという、一番安易な方法を取ったトラックはハッキリ言って出来が悪い。MOODSWINGS,ORB,ORLANDO,SYSTEM 7はまだいい方。GLOは彼らのアルバムに入っている曲とほとんど変わらない。SHAMENや808 STATEなんかはいかにもな音で魅力を感じない。ここに名前を挙げていない奴は論外。トリビュートと勘違いしてないか？ "ISLE OF EVERYWHERE"をどうやったらこんなにダサい曲に出来るんだ？ まぁ、怒るのはこれくらいにしておいて、テクノファンへの"YOU"のとっかかりとして、そして"YOU"を聴き込んだ人にはこの中の優秀なテイクからは新しいこのアルバムの楽しみ方が見えてくるかも知れないという事で薦めておきたい。