PERE-FURU＋サム・ベネット2004/3/29 新宿PIT-INN
鬼怒無月(g)、勝井祐二(vln)のインプロデュオPERE-FURUに、ゲストのサム・ベネット(ds,electronics)を加えたトリオでの演奏です。
鬼怒は従来のストラトに代えて、この日はレスポールのギターを使用。97年頃からずっとストラトを使っていたので、この変化は興味深いです。他にはガットギター、スチール弦のエレアコ（サウンドホールの大きいもの。これも新しいギターか？）、ドブロと計４本ものギターを持ち替えて使用。勝井はいつものZETAとYAMAHAの５弦エレクトリック・ヴァイオリンを使用。
ベネットはドラムセットとWAVE DRUMを中心としたエレクトロニクスのセットを併用。WAVE DRUMの他には、リズムマシン、CDプレイヤー、ミニキーボード、Air Synthなどを使用。また、CD-Rのお買い得版のプラケースの中にコンタクトマイクを入れ、小型マッサージャーを当てた振動音を拾って鳴らしたりします。他にも電動歯ブラシや泡立て器（？）など、得意の電動小物類がこの日も活躍。WAVE DRUMに張り付けられたピックアップに近づけて音を拾い、遠近感を演出するアイディアは面白い。ドラムセットは１タム、１フロアのシンプルな構成。
１．前半はメロディアスなガットギター＋WAVE DRUMのタブラ風音色＋ディレイを多用したヴァイオリンの組合せで進行。ベネットはコンタクトマイクを使ったロウファイなヴォイスや、CDプレイヤーを使った金属音のループ、Air Synthを使った電子音などを重ねていきます。１０分経過時点で鬼怒はレスポールに持ち替え。ベネットはチューブドラムのような矩形波風の音色に変更。約２０分の演奏。MCは鬼怒と勝井が今年４０になるということで「厄年」の話題。いつもならまったりとMCが続くのですが、この日はベネットが演奏をせかして、話が中途半端に終わる場面がしばしば。
２．ベネットはドラムセットへ移行。あまり凝ったことはやりませんが、シンプルでタイトなリズムを提示します。鬼怒はレスポールでユーモラスな、時にはブルージーなフレーズを加えます。後半はリズムチェンジ＆テンポアップでかなりヒートアップした演奏に。約１０分。
３．ベネットはリズムマシンによるリズムにWAVE DRUMで口琴のようなパーカッション音を加えます。鬼怒のガットギターと勝井のYAMAHA（このセットのみ使用）によるメロディアスなアンサンブルがこれに乗ります。特に後半の牧歌的なアンサンブルは絶品。この息の合い具合はとても即興とは思えないです。これをかき乱すように乱入した、ベネットの金物小皿＋小型マッサージャーによるノイズは、イコライジングされた人声にように聞こえてギクリとしました。約１０分。
４．ベネットの音程感の強いパーカッション音＋レスポール＋ヴァイオリンの、ゆったりとした隙間の多い演奏が続く前半。後半はベネットがドラムに転じ、一転してグルーヴィな演奏に。約１０分。ここで休憩。
５．鬼怒はスチール弦のエレアコを使用。ボトルネックも使用し、ブルージーなフレーズを聴かせます。勝井はソロアルバムを思わせる多重ディレイ音響を多用。ベネットはSE音のループ＋マッサージャーの振動音から始まり、タブラ音色へ移行。後半に出てくる電話のような電子音のループがインパクト大。１５分強。
６．ベネットのSE音のループ＋ミニキーボードの電子音に、勝井のディレイピチカートが絡む形でスタート。ベネットはその後、スネア風の音色→アコースティック風パーカッション音→シンセ風の電子音とWAVE DRUMの音色を変えながら演奏。勝井がモチーフを提示し、それを鬼怒が受け継いで膨らませていく形を繰り返して展開していきます。このあたりの呼吸の妙はさすが。１５分強。その後、MCで「４０代になったら趣味を持ちたい」という話をまた途中で切り上げて、再び演奏へ。
７．ベネットによる呼吸音のループ＋振動音からスタート。その後はWAVE DRUMのベース音（音程変化が大きいので、普通のベースラインとはまったく違った感触）＋ガットギターの刻み＋ロングディレイによるループを残したままのヴァイオリンソロの組合せで展開。特に後半の疾走感は、かつてのボンフルのアコースティックナンバーを思わせる素晴らしさ。最後はベネットによる虫の声のSEで静かに終了。１０分強。
８．ベネットはブラシを使ってガンボ風のグルーヴィなリズムを叩き出し、これにレスポールのバッキングとアグレッシヴなヴァイオリンソロが絡みます。後半はリズムチェンジを繰り返す形で進行。約１０分。
９．アンコールセット。鬼怒はドブロギターを使用。ベネットはパーカッション＋ベルの音色で、勝井のフレージングも合わせてブルーグラス風味の演奏。約１０分。
この３人の相性の良さは予想通りでした。予想を大きく裏切るような場面はありませんが、安定した演奏が保証できるのはやはりさすがです。