太田恵資、坂本弘道2004/5/17 入谷なってるハウス
太田恵資(vln)と坂本弘道(cello)のデュオインプロライヴです。この日はKEVIN AYERS2日目、新ピの林＋内橋＋外山など、かなりなバッティングデーでしたが、諸事情によりこのライヴを選択。まったり見れるかなと思っていたら、案に相違して客席は満員、さらにノリが異常に良くてちょっと驚きでした。
１．太田のel-vlnと坂本の電動工具やあんま器を使った演奏でスタート。両者ともロングディレイでうっすらと背景的な音を残しながらの演奏。その後はチェロの断片的な音をループさせ、それに重ねる形で２人のメロディアスなアンサンブルが構築されます。さらに坂本の絞り出すようなヴォイスが加わり、荒涼とした美しい風景が繰り広げられます。このあたりの独自の世界観はさすが。終盤は太田がサンプラーでタブラとシタールによるインドポップ風のバックトラックを流し、これに太田の歌とヴァイオリン、坂本のミュージカルソーが乗る形。最後はトラッド風のデュオで終了。２０分弱の演奏。
ここで休憩をかねてMCタイム。両者は２人だけで演奏するのは初めてだそうです。「某バンドではステージ両脇に遠ざけられてたから、これだけ近くでやるのも初めて」だとか。その後、ヌルピョンのレコーディングに坂本・勝井らで参加したが、それが実は当て馬であとでそっくり差し替えられてしまった話など。
２．ここから短めのセットが続きます。太田のac-vlnによる速いフレーズに坂本のフィルターを使ったエフェクト的な音が加わるセット（２分）、坂本の弓弾きフレーズを軸に太田のac-vlnのピチカートやのど歌、ホーミーなどが加わるもの（５分）、坂本のシンバルを弦に挟んでの横抱きピチカート演奏（シンバルを使った弦スクラッチ入り）に、太田がラッパvlnを弓で叩いたり、ac-vlnのテンションの高い演奏で対抗、最後は弓をばらしてvln本体を挟み込みようにして弾くという演奏（７分）。ここで休憩。
３．太田お得意の「私の商売は〜」という歌でスタート。次いで「坂本さんの商売は〜〜朝から晩まで....はいどうぞ」といきなり演奏を振って爆笑。坂本はディレイループでアタックの強い音を少しずつ重ねていき、これに太田も加わって次第にリズミックに、その後はテンションの高いアンサンブルが続きます。坂本は２パートのループを切り替えて場面を転換。続いて先端にゴムの付いた電動工具と風切り音を出すおもちゃを持ち出して振り回すと太田がメガホンで「扇風機はいかがでしょうか」とセールスを開始。その後坂本がグラインダーを回すと風圧で髪が舞い上がってまた爆笑。太田がメガホンのサイレンを鳴らすと坂本はカオスパッドのシーケンス電子音を加えます。太田はメガホンを左右に振ってドップラー効果？を狙います。続く坂本の電子音をバックに太田がムーディに歌いだす場面も面白い。太田がel-vlnに持ち替えて１人ディレイアンサンブルを始めると、坂本はおもちゃの豆鉄砲を取り出してチェロを撃ちまくったり、チェロの上で豆粒をぶちまけたりします。かなりラウドな音のアンサンブルを経て、最後は坂本がピアノを弾いて静かに終了。先日のF以来、ピアノづいてるでしょうか？ ２０分強の演奏。
ここでまた休憩をかねてMC。VINCENT ATMICUSのクアトロのイベントにCOTU COTUで参加することになった坂本は、「最初はラウンジでの演奏かと思っていて、その後サブステージでの幕間の演奏という話になって、最後はとうとうメインステージになりました(^_^;)」
４．坂本はブリッジ部分に木片（？）を当ててこれを弓で弾き、daxophoneのような音での演奏。その後は太田がac-vlnを両手で叩き、坂本はさっきぶちまけた豆（？）を拾い集めてチェロの中に入れ、振り回してシェイカーに。まるで打楽器アンサンブルのよう。さらに太田がel-vlnでメロディを弾く中、坂本はシンバルをチェロの足に通して回したり叩きつけたりしてけたたましく鳴らします。いったん落ち着いたところで、坂本はフィードバックをかけた状態でチェロを逆さにし、ヘッドを床にこすりつけてノイズを出します。太田はel-vlnにワウファズをかけてギターのようにカッティングすると、坂本の破壊的な音色でのメロディアスなソロから、会場全体を響かすようなフィードバック音の洪水へ。その後は両者ディレイループを効果的に使用したアンサンブルが続きます。太田がサンプラーでフュージョン風のバックトラックを流すと、坂本はカオスパッドをアナログシンセ風に鳴らしながらミュージカルソーを演奏。太田はさっきのパートで使ったループとバックトラックを振り付きで切り替えて笑いを取ります。ドローン風の持続音をバックに太田がエキゾチックなフレーズのソロを弾くと、それを妨害するように坂本はグラインダーで火花を飛ばします。バックトラックを切り替えて「一人太田のトルコ」に突入すると客席は爆笑。このあたりから両者謎のパフォーマンス合戦に突入。坂本はノコギリを２本持ち出すと、弾かずにマイクの前で揺らしたりぶつけたりします。さらにチェロをアンプラグドにするとステージを降りて生音でのデュオへ。さらに扉を開閉するわ、うがいをするわ、チェロの足を向けて決闘を始めるわ（お互いヴァイオリンとエフェクターを人質に取り合うのがおかしい）、太田の「パイのパイのパイ」の替え歌から両者ひっくり返って演奏し、落ちたグラスの割れる音も加わってムチャクチャ状態のままエンディング。約４０分の演奏（というか後半１０分以上はもはや演奏とは呼べないような(^_^;)）。
５．もうこれ以上は無いかと思っていたらまさかのアンコールセット。坂本は口琴を逆にくわえて奇妙な音で鳴らすと、太田は音叉を鳴らして歯に当てます。ほとんど無音演奏状態。最後は太田がマイクの前で爪を切って終了。
ちょっとネタ的な部分が多かったのが何でしたが、演奏部分の鋭さはさすがです。面白かったけど次回はもう少しまじめな部分を多くして欲しいところです。